家族の実話エピソード

母娘七五三着物物語

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あの着物を見立ててもらった日のことはよく覚えています。

兎に角やたらにほめられる日で、よく似合う、やっぱり似合うと次々に声が上がり、

それから大きくなったら綺麗になるよと続くのです。

それは私の七つのお祝いの着物でした。

祖母の友人がお店中のとっておきを集めておいてくれて、

さらにその中でもとびきりのおすすめだというその着物は、確かに美しい柄でした。



そして、社交辞令とは言え、誰が見ても似合うと言ってくれました。

七五三当日、初めての帯におっかなびっくりの私はちょこんと澄ましているのがやっとでした。

普段お転婆な私が大人しいのを見て、家族の誰もが借りてきた猫のようだと笑い、

そしてまた良い着物だ、似合う似合うと微笑んだのでした。

七五三が済むと歴代のお祝い着とともに蔵に仕舞われ、何年も何年もそのままでした。



時は過ぎ、私も家庭に入り、娘が誕生しました。

何を隠そう、娘は胎内の4D写真の段階ですでに夫似が確定していたという、筋金入りの夫顔。

産まれた瞬間、ひとめ見て夫が考え事をしている顔そっくりだと驚かされ、

その後も夫から産まれたんじゃないかと思うほどの夫顔のまま、すくすくと育ちました。

すくすくと育った結果、スタイルも夫似。

ひょろりとした痩せ型の、わりとのっぽちゃんです。

さらに娘は色白さん。

私は色黒と言われたことはありませんが、色白と言われたこともありません。

ルックスにおいて、私と娘とは全くと言っていいほど似ていませんでした。

その娘が七つの七五三を迎える年になりました。

三つのお祝い着は私のお下がりだったので、七つもそのつもりでいました。

娘が私と同じ着物を着て七五三参りをするというのは、思い出と娘の成長とが重なった、不思議な喜びでした。

しかし、不安もありました。

三つのお祝い着は、三つのこどもなら誰でも似合うような、可愛いらしい赤いお被布でしたが、七つの着物は違います。

色や柄の、似合い不似合いがはっきりする、大人と同じ着物です。

私に似合っていたあの着物。

私には似ていない娘に、果たして似合うのだろうか。

そんな気持ちがあったのです。

そこで、実家の蔵から着物を出す時に、念のために他の七つのお祝い着も一緒に出しておいてもらったのでした。

母に渡された風呂敷は絹の重み。

たとう紙を広げると、袖からあの懐かしい蝶や牡丹の艶やかな模様がこぼれました。

ああ、やっぱりこの着物が好きだと胸が一杯になりました。

娘を呼んで着物を見せると、何もいわずとも私の着物を気に入ったようでした。

そしてあててみると・・・

不思議なことに、私が着ていた着物とは違う着物のように見えました。

そしてそれは美しく、娘にとっても似合っていたのです。

この着物はこんな柄だったかしら、こんな色だったかしらと新鮮に映りました。

さらに、他の着物はあててみても、どうしてか今ひとつしっくりこないのでした。

あの日、私にぴったりで、私以外に着るこどもがないんじゃないかと言われたあの着物。

七つになった娘にも、誂えたように似合ったことは不思議でしたが、そのことは私を非常に満足させました。

七五三当日。

ホテルの美容室でメイクと着付けを済ませると、娘は私と同じようにお澄ましをしていました。

その澄まし顔を見て、あの日の家族のように私も笑い、似合う似合うと微笑みが止まらなかったのでした。

義実家でも誂えかと思ったと驚かれるほど似合っていました。

似ていないと思っていた私と娘。

それでもやっぱり私の産んだ私の娘です。

似ているかどうかはともかく、同じ着物がぴたりと似合っていたことは間違いありません。

祖母が見立て、母が着丈や身幅を直し、私が着た着物。

その着物で七五三を祝えたことは、男親の夫にはわかりえない、私と娘との密かなの喜びでありました。

トップ画像出典: hanamaru-kofu.com


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