家族の実話エピソード

いつか、笑って振り返られる日がくる

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今でも、思い出すと胸が痛くなるのは、子供がまだ小さかった頃のこと。

ちょうど2才差で産まれた長女と長男。

上の娘は体も丈夫で育てやすかった。でも、下の子が産まれたとたん、

2才のイヤイヤ期と、赤ちゃんにママがとられるという淋しさが重なり、私が赤ちゃんを抱っこしただけで泣きわめくようになった。

そして、ママ以外の他の人のお世話を一切拒否した。ママじゃなきゃダメ。

そんな時こそ、ママが娘の心の変化を受けとめてあげなければならない。

頭ではわかっている。でも、心がついていかなかった。

現実には、下の子の世話、家事、寝不足が我が身にのしかかり、全く余裕がない。

その上、私は、一人の時間が必要なタイプの人間だった。

下の子が産まれるまでは、娘が一人遊びをしている横で本を読んだりする余裕があったけれど、それが二人になると一変して、自分の時間がなくなる。

四六時中二人から求められるということが、私には耐えられなかった。

夫は子育てに協力的だったが、仕事が忙しくて帰宅は深夜。

実家の両親にはもう頼れず、時々義母には手伝いに来てもらっていたが、やはりある程度気を遣う。

平日の日中の育児は、私一人の肩にかかっていた。

毎日が、ギリギリの綱渡り状態だった。

そんな時、ある幼稚園が主催する2才児教室があることを知った。

午前中2時間ほど、親から離れて、幼稚園の一室で先生やお友達と一緒に過ごす。

幼児教育のためではなく、自分が少しでもホッとする時間が欲しくて、わらにもすがる思いで申し込んだ。

週に2回、幼児教室に通う日々が始まった。

案の定、送り届けると泣きわめく娘。それを置いて去っていく罪悪感。

ごめんね。

心の中で謝る。

ごめんね。でも、ママがママでいるために、ちょっとだけ、休ませて。

その幼稚園から車で少し走ると、海がある。

車を停め、海を眺める。

娘の嫉妬を気にするすることなく、赤ちゃんの息子を抱いて。

ゆっくりと海沿いを歩く。家の中にいると感じることのない、開放感。

私が一人で煮詰まっている間も、海は広がり、寄せては返す波の営みを、太古の昔から変わることなく続けている。

世界は、止まらず、動いている。そう感じることができる。

いつの間にか息子が腕の中で眠ってしまうと、やっと一人になれたような気がした。

そうして初めて、娘を心配することができた。

もう泣きやんだかな。楽しめているかな。

そうして、少し余裕を取り戻した私の心に、自然と浮かんだ言葉があった。

「いつか、笑って振り返られる日がくる」

子育てで大変な時はほんの一時のことだ。永遠には続かない。

今までだって、受験や就職、仕事、恋愛、大変なことは山のようにあった。

でも、それが終わった今では、

「そんなこともあったな」

と笑って振り返ることができている。それと同じだ。

そして、想像がふくらむ。

いつか娘が成人して、赤ちゃんを産んで、子育てに煮詰まった時、

「おばあちゃんが見てるよ。息抜きしておいで~」

と余裕で言えるようになるのだろう。

娘の話をゆっくり聞いて、

「わかるわかる。ママもそうだったから」

と、いかにも経験者ぶって、えらそうに言う私。

想像すると、ちょっと笑える。

そんな日が、いつかきっと、来る。

海を見ていたら、やっとそんな気持ちになれた。

娘を迎えに行く時には、自然と笑顔になれた。

でも、少し経つと、また煮詰まった。

未熟なママは、そんなにすぐにはいいママになれない。

そしてまたあの海辺の時間を過ごして、リセットする。

その繰り返しだった、あの頃・・・

あれから10年。

まだ孫ができる年齢にはなっていないけれど、あんなに手がかかった娘も、中学生になった。

人生の反抗期をあの時に全部終えたのか、というぐらい、今はすっかり落ち着いている。

私とは性格が正反対なので、何かを相談したら、違う目線で助言してくれたりする。

守らなければいけない、何もできない子供だったのに、今では私よりも背が高くなり、なくてはならない心の支えになっている。

勿論、今は今の悩みがある。

子供のこれからの進路、複雑になる交友関係。

それに加えて自分自身の加齢による衰えや、これからの生き方など。

悩みは尽きることはない。

でも、あの頃の辛さを乗り越えたという自信は、これから先の試練を乗り越える上で、確実に力となるだろう。

子供を育てているつもりが、知らず知らずのうちに、自分も育ててもらっていた。

それが、子育てというもの。今はそう思える。

いつか、笑って振り返られる日がくる。

その時は、本当に来た。

トップ画像出典: ittybittygiggles.com


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